甘南備山逍遙にようこそ
甘南備山逍遥  宇治・天ヶ瀬ダム・森林公園 2001.12.6  更新
少し前になりますが昨年の暮れに大阪府と和歌山県の堺にある加太という町の裏山に登ってきました。
加太といえば大阪の人はたいがいは知っています。もともとは漁港ですが、海水浴や潮干狩り、釣りに出かけるところです。淡島神社の雛流しの行事は毎年季節の話題として新聞に登場します。
登ったのは、高森山(285m)と四国山(240m)です。
天ヶ瀬ダムと槙尾山
目の前が紀淡海峡。友が島や淡路島、遠く四国まで見えます。 気分転換に宇治の天ヶ瀬ダムの北側、森林公園に行って来ました。

 宇治という町はご存知のように京都の南にあり、宇治茶で有名なところです。紫式部の「源氏物語」の「浮舟」の里ということでも有名で、最近オープンした源氏ミュージアムが賑わっています。かの有名な平等院にも新しい宝物殿ができ、ますます注目を集めています。

 これらの施設の中央に、琵琶湖から流れ出した宇治川が横たわり、豊かな水量を誇っています。夏には鵜飼いも行われています。

 その宇治川を少し遡って行くと関西電力の水力発電所、天ヶ瀬ダムがあります。関西の子供達の多くは社会見学や遠足で訪れたことがあるでしょう。 ダムの提体には観光客の姿もちらほらあります。治水ダムではありませんので、いつも(多分)水はまんまんと蓄えられています。周囲の山の紅葉が湖面に映っています。感嘆の声が上がります。
天ヶ瀬ダムと槙尾山
槙尾山頂上から見た紅葉
 そのダムの提体を北に渡ったところに、目的地の森林公園があります。山の名前は槙尾山。頂上までも登ってぐるっと回ってきても、約二時間程度のハイキングコースです。コースといっても、縦横に遊歩道が整備されているので、どの経路を辿るかはお好みです。 槙尾山頂上からの紅葉の山
紅葉の舞い落ちるみち
 ダムから少し登っていったところに森林公園の入り口があり、小さな駐車場や芝生広場やトイレがあります。大きな公園案内図を確かめて、さあ出発です。小さな起伏をやり過ごして行くと、あっという間に槙尾山の頂上に到達です。見晴らしの良い東屋があり、天ヶ瀬ダムや湖を一望できます。今通ってきた紅葉の尾根が錦の帯を張り巡らせたかのように眼下に見えます。落ち葉が舞い落ちる中で弁当をとって秋の山歩きのすがすがしさを満喫します。ススキが白い綿毛になり、逆光の中で赤いモミジの葉っぱが光を通して余計に赤く輝きます。 紅葉が舞い落ちるみち
木洩れ日のみち(工事中)
 さて、お手軽に秋の山を楽しんで下ってくると、新しい遊歩道の階段が積んでありました。新しい遊歩道には「木洩れ日の道」というサインがありました。時間が余りかえっているので、そちらに入ってみることにしました。
 そこからです。私の気分が悪くなったのは。その遊歩道はまだ工事中でした。
 ブルドーザで強引に山肌を削り取って道を作っています。削り取った土は、そのまま斜面にむごたらしく押し落しています。木の根っこが無残に押し倒されています。

 いっぺんにこの公園が最低の場所だと思えてきました。来るんじゃなかった。だいたい、森林公園とかいう名前のところで、まともなところなど、お目にかかったことなどなかったのです。無理やり歩かされるような、距離を稼ぐためにわざわざ入り組んだ道として設計された遊歩道。不自然な登り下り、わざとらしい親切ごかしの階段。設計した人が「市民連中の健康管理を俺が担ってやっているんだ。このくらいは歩かせないと。どうだ楽しいだろ。ほら、運動になるだろ。自然に親しむことは大事なことなんだぞ……」とつぶやきながら、地図に線を引いているのが目に浮かぶようです。けたくそ悪い。

 山肌を無残に、無意味に、必要以上に削り取り、何が「森林公園」でしょうか。どのようなお金が使われているのか知りませんが、極めて不愉快です。

 すっかり落ちこんで下りてきた私をようやく微笑ませてくれたのは、子供連れの若い女性でした。山苺(冬苺)を取って子供に食べさせているのです。子供達は喜んでいます。山の豊かさといえば大げさですが、かけがえのないものということを教えるのが森林公園の役割ではないでしょうか。木や草の名前を覚えて親しみを持ってこそ、守っていくべきものだという気になります。

 遊歩道を作るのも結構、展望台を作るのも結構、芝生広場を作ることも結構。しかし、その目的を間違っては何もならないどころか、逆効果です。つまり、アウトドアライフ派といいながら実は自然に何ら興味がない輩を呼び寄せることになります。自分は自然が好きであると思い込み、本当は自然の破壊者であることを認識していない連中ですから、とても始末が悪い連中です。そんな連中を呼ぶために、自然を破壊してまで、ばかのひとつおぼえみたいな距離を稼ぐだけの遊歩道計画をすることはないのです。

 並んで歩けるほどの幅のある、やたらと階段が設えられている立派な遊歩道が、本当に必要ですか? 真剣に考えて欲しいものです。それとも、予算消化ですか? あるいは、本気で市民の健康管理は俺が、と考えているんですか?
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